卵生メダカは高温に弱い?
日本は春夏秋冬、一年の間で30度くらいの気温差がある国です。
卵生メダカの故郷のアフリカや南米は赤道に近く、一年中比較的安定した高温多湿の気候です。
ですので、国内の水槽飼育では一定の温度幅に保ってあげる必要があります。
望ましい温度は22〜25度です。
卵生メダカの中でも、アフィオセミオンなど非年魚の多くはやや低温を好み、25度を超えると調子を崩すことがあります。
比較的高温に強いノソブランキウスなどの年魚の仲間でも、経験上27度が限界かな、と思います。
冬場は水槽にヒーターを入れて水温が下がりすぎるのを防ぐことができますが、正直夏場の水温管理の方がやっかいです。
今回は卵生メダカの夏の高温対策について考えてみましょう。
高温がもたらす影響
熱帯魚をやや高めの水温で飼育すると、成長を促進させる効果があります。
ただ、高すぎると当然、魚も体調を崩しやすくなります。
その原因は、温度自体というよりも、高温がもたらす下記影響によるものです。
■ 酸欠
熱帯魚は水中の酸素をエラから取り込んで生きていますが、高温下では水中の溶存酸素量が減り、魚が酸欠を引き起こす原因となります。
特に、フィルターを使わずに止水で卵生メダカを飼育している場合は、この溶存酸素量の減少が顕著になります。
■ バクテリアの死滅
良好な飼育環境では、水中に適度なバクテリアが存在し不要な老廃物を吸収することで、水質が保たれています。
卵生メダカをベアタンクで飼育している場合、私たちが水質を悪化させないよう日々老廃物をスポイトなどで吸い出す以外にも、水草に棲みついていているバクテリアが水中の亜硝酸などを積極的に吸収し、水質維持に一役かってくれています。
高温下では、これらのバクテリアも酸欠となり死滅しやすく、その数が減るだでなく、死滅したバクテリアの死骸がさらに水質悪化を加速させてしまいます。
これらの結果、夏場の高温時は魚たちが体調を崩しやすくなり、餌の食いが悪くなり身体が痩せ細り、繁殖行動も見られなくなります。最悪は病気を引き起こし死んでしまうこともあります。
なので、日本では気温が上がる6月から9月の4ヶ月の間は、特に水温上昇に気を配り、上がりすぎる場合は対策を取る必要があります。
夏場の高温対策
ではどうやって夏場を乗り切るか。具体的な対策をご紹介します。
◇ 水温を下げる
当たり前ですが水温を下げるのが一番。少なくとも水温が27度を超えるような場合は必ず水温をコントロールしましょう。方法はいくつかあります。
1. 水槽を涼しい場所に移動する
小型水槽で水槽の数も少ないのであれば、夏場だけ、エアコンの入った部屋や日が当たらない風通しのよい場所へ水槽ごと移動してしまうのがベストです。ただ、水槽をおけるスペースの確保と、移動時に水槽を水ごと移動する作業が大変です。
2. エアコン、水槽用クーラーを設置する
今水槽を置いてある部屋にエアコンを入れられればベストです。これは冬場でもヒーターいらずになるので最高です。
ただ、水槽のためにエアコンを新たに設置するのは、設置時のコストと毎月のエアコン代という費用面の問題があり、家族の了承を得るのが難しいかもしれません。かくいう私もその一人です(笑)
その場合、便利な水槽用クーラーを設置するという手があります。
水槽用クーラーには大きく分けて2つのタイプがあります。
小型水槽向けでコスパのよいそれぞれのおすすめはこのような製品です。
● 水槽の水を汲み出し水温を調整して水槽へ戻すタイプ
● 扇風機のように水面に風を当てることで水温を下げるファンタイプ
水槽用クーラーなど昔は使うことはなかったですが、地球温暖化の流れでしょうか、一般化しつつありますね。種類が増えて価格も下がってきたので、魚たちの安全と自分の管理上の安心のため、導入を検討するのはアリだと思います。
◇溶存酸素量を増やす
コスト面で水槽クーラーが導入できない場合は、水温自体を下げるというより溶存酸素量を確保することでカバーしましょう。
1.水草の量を増やす
水草は光合成で水中の酸素を増やしてくれるので有効です。夏場は水草を増やすことで溶存酸素量を増やすことにつながります。
ただ、夜間は光合成せずに逆に水草が酸素を吸収してしまうため、それだけでは充分な酸素量を維持できるまでには至りません。他の方法と併用するようにしましょう。
卵生メダカにおすすめの水草についてはこちらの記事でご紹介しています。
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2. フィルターでカバーする
水槽用クーラーのコストがかけられない、そこまで高温ではないけど酸欠が心配、という場合は、通常飼育の中で水中に酸素を増やす工夫をしてカバーするという手があります。
フィルターは水槽の水を綺麗にすることはもちろん、水槽内に水の流れを作ることで溶存酸素を増やすことに役立ちます。
フィルターの種類としては、吐き出しの水が水面に落下する形の「上部フィルター」がおすすめです。他のフィルターでも溶存酸素量を増やすことはできますが、上部フィルターから水が水面に落ちる時に空気中の酸素を多く取り込むことができ、落下時にできる波紋が流れを作ることで水面からの酸素供給を助けるとともに、水面に油膜ができにくくしてくれます。
3. エアレーションでカバーする
また、溶存酸素量を増やすには、フィルターではなく、エアレーションだけを行うのがコスト的に最もミニマルなやり方で、酸素量も抜群です!
エアポンプからエアチューブを通して水中のエアストーンから酸素をブクブクやるだけです。エアストーンから出る直接的な酸素はもちろん、先に述べた水面からの酸素取り込み効果も生まれます。
気をつける点は、強いエアレーションだと水流が激しくなり、卵生メダカが疲れてしまうため、エアレーションはごく弱く、また、エアストーンはなるべく水面に設置してあげるとベターです。
エアレーションについてはこちらの記事で詳しく解説しています。
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◇ 年魚は卵や稚魚で乗り切る
最後に、夏場の高温で親魚な体調が落ち死んでしまうことも想定し、春までに充分な卵を取り、夏以降は余生を全うしてもらうという手があります。
少し残酷に聞こえますが、1年でライフサイクルを全うする年魚ならではの飼育スタイルです。
逆に、稚魚は成魚よりも高温耐久性が高いことから、夏場に卵を孵化させるイメージです。小さな稚魚をたっぷりめの水量の水槽で育成すればグングン育ち、高めの水温の中で成長の促進にもつながります。
エアレーションのブクブクを入れておけば最強です!
以上、夏はちょっとだけ、高温や酸素量に気をつけてあげる必要があります。
自分のアクアリウム環境に最適な高温対策を考えて実行しましょう!
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