卵生メダカ 水槽導入時の水合わせの重要性
このブログでも解説している通り、卵生メダカ飼育は決して難しいものではありません。他の熱帯魚でもそれぞれ飼育のコツがあるように、知識をもって臨めば飼育難易度が高いとされている卵生メダカの飼育や繁殖も充分可能です。
卵生メダカを落とす=死なせてしまう原因の多くは、新しい卵生メダカを我が家の水槽にお招きする時の水合わせの際の不注意です。
もちろん、これは他の熱帯魚でも同様なことです。ただ特に卵生メダカはこの導入時の水合わせを丁寧に行うことをおすすめします。
では、まずその理由となる問題点から解説していきましょう。
卵生メダカの水合わせの問題点
問題点といっても卵生メダカ自体には何の積みもありません😅
あるのは以下のような問題点です。
(1)卵生メダカ入手先と自分の水槽の水質の差が大きい可能性が高い
卵生メダカは流通数やルートが限られています。これはまだまだ卵生メダカの認知度が低く需要が少ないため商売になりにくいことと、ショップ側に卵生メダカ飼育の知識やノウハウが少ないことが原因です。
需要が多く流通が盛んな熱帯魚は、多くのブリーダーが頻繁な水換えによる大量繁殖を行う中で育ちます。その後、多くの熱帯魚店で頻繁な水換えによる大量飼育の環境で取り扱われます。その過程で意図せずとも各店舗で販売される魚たちは、私たちが自宅で用意する日本の水道水をベースとした水質に近づいて全国的に比較的平準化されます。
一方で、卵生メダカのような需要が少なく流通が限られる熱帯魚は、供給元のブリーダーが手塩にかけて育てますが、その水質はそのブリーダー独自のものになりがちです。また、その後も幅広い流通経路をとらずブリーダーから直接入手するケースがほとんどのため、先に説明したような水質の平準化が行われにくいという特徴があります。特に海外から直接輸入して入手するような場合などはかなり慎重な水合わせが必要です。
(2)入手先のブリーダーの飼育水質が、かなりの酸性寄りや古水飼育の場合がある
卵生メダカはその飼育方法について古くから独特の方法論が語られ伝承されています。例えば、茶色くなった酸性のピート水での飼育がよい、とか、水換えに敏感なので頻繁に行わずやや古い水で飼育した方がよい、などというようなものです。
たしかに難易度の高い一部の卵生メダカや現地で採取されたばかりの新種には有効なのかもしれませんが、私たちが現在入手できる種類の卵生メダカには必ずしもあてはまりません。
卵生メダカも長い年月をかけて愛好家が増え、その中で卵や成魚のやり取りが行われる中で、飼育における常識が変わってきています。卵生メダカ自体も急な水質変化でなければ環境への適応能力は高いため、現在は他の一般的な熱帯魚同様、中性前後の新しい水で飼育されることが普通になっています。
ただ、ブリーダーの多くは古くからの卵生メダカ愛好家であることもあり、中にはこれら昔ながらの水質にこだわって飼育されている方もいます。そのような方から入手した場合は、どうしても自分の水槽の水質とのギャップが大きくなる可能性があります。
以上、不安になるような問題点を並べましたが、どんなところから入手しても丁寧な水合わせさえすれば問題ありません^_^
では、具体的な水合わせの方法とポイントをご説明します。
水合わせの方法とポイント
水合わせの具体的な方法と気をつけるべきポイントについて、実際に卵生メダカを入手して自分の水槽に導入するまでの流れに沿って解説します。
①卵生メダカ入手時
まず入手方法は、「熱帯魚ショップでの持ち帰り購入」「ネットショップでのオンライン購入」「知り合いからもらう」などが考えられますが、いずれの場合でも必ずこうしてください。
【ポイント1】入手先の飼育水をできるだけ多くもらう
これは前の項目で説明した問題点を解決するベースとなる重要なポイントです。水合わせは、「今までの水」と「これからの水」を合わせる作業です。入手先の水槽の「今までの水」が足りないと充分な水合わせができません。少しでも多くもらっておけば慌てずに丁寧に水合わせができます。
卵生メダカを入手する際、購入するショップやもらい先の知人に、「飼育水を多めにください」と依頼してください。大抵の場合は多く入れてくれたり、別の袋に飼育水だけ入れてくれたりします。限界がありますからそんなに多くはもらえなくても2〜3リットルもあればだいぶ違います。
②卵生メダカ到着時
卵生メダカと飼育水が家に着いたら、すぐに今ある水槽に入れたくなりますが慌てないでください。
【ポイント2】メダカと入手先の飼育水は新しい水槽に入れる
いきなり自分の飼育水(これからの水)が入った水槽に入れようとしてはいけません。水質の急変を避けるために「今までの水」をベースに水合わせをしていきます。
まずは新しく用意した空の水槽にもらってきた飼育水ごと卵生メダカを入れます。水槽は小型のものでよいです。プラケースでもよいですが冬場はヒーターを入れる必要があるので注意してください。
一般的な熱帯魚の水合わせでは、自分の水槽に導入した魚を入れるという考え方ですが、自分の水槽の水量と入手先の飼育水の水量では、圧倒的に自分の水槽の水量が多いケースがほとんどなのでリスクが大きすぎます。あくまで入手先の「今までの水」をベースに水量を増やしていく考え方を持つことが大切です。
また、この方法で水合わせを行えば、自分の水槽にあらぬ病気や細菌を持ち込むことを回避することができます。
③水合わせスタート
いよいよ水合わせスタートです。先ほど卵生メダカを入れた新しく用意した水槽に、自分の水槽の水を足していきます。
【ポイント3】手酌でゆっくりと足し水する
プリンカップ1杯分くらいの水を自分の水槽から汲んで手酌するように新しい水槽に加えます。これを繰り返して水嵩を上げていく流れですが、ゆーっくり、目安として1時間に1回以下のペースで行ってください。
というと、水槽の前にずーっと何時間も張り付いていないといけないのか?と思う方がいると思いますが、別にその間にテレビを見ようとお風呂に入ろうと昼寝してしまってもかまいません。1時間1回のペースというのは、最速でも、という意味です。極端な話、2回目の足し水が翌日になってもかまいません。
メダカは新しい水槽の「今までの水」の中にいます。だからずーっとこのままでも別によいのです。こちらの都合で早く水嵩をあげたくなる気持ちはわかりますが、決して焦ってはなりません。
25センチ水槽での水嵩のイメージとはしては、最初「今までの水」だけを入れた状態で水深5センチ、1時間に1回で1センチづつ水位が上がって10時間後に水深15センチというような感じです。実際は途中で足し水を忘れてしまって2〜3日かかることもありますが全然かまいません。その間水位が多少低くても全く問題ありません。
サイフィンを使って点滴のようにポタポタと水を足していく方法でもかまいません。要は焦って水位を上げたがらないということです。メダカは水位5センチでも全然へっちゃらですので…。
これで水位が適当量になったら水合わせ完了です。
経過観察
導入したメダカは新しい環境に慣れるまでは体調を崩しやすいです。また、病気や細菌を持っている可能性もあります。毎日メダカの体調や動き方を観察しましょう。
病気やヒレ傷がある場合は、元気がなかったり、おかしな動きをしたり、餌を食べなかったりといった行動が、1週間くらいのうちに現れます。その場合は塩浴や薬浴をさせて対処しましょう。
卵生メダカの病気と治療法についてはこちらの記事で詳しく解説しています。
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餌は導入2〜3日後から少量づつ与えます。環境に慣れるまでは餌は少なめにしておきましょう。
1週間ほど様子を見て、水に慣れて元気に泳いでいるようであれば導入時の水合わせひとまず成功、ひと安心です^_^
その後は他の熱帯魚同様、水質を急変させなければ、他の水槽にメダカを移したりしても全然平気で、卵生メダカは驚くほど丈夫で環境適応能力が高いです。
重要なのは、最初の導入時の水合わせだけは丁寧に行うこと。そうすれば大切なメダカを落とすことは激減すると思います。
以上、卵生メダカの水合わせの方法とポイントについて解説しました。みなさんの参考になれば幸いです。