ブラインシュリンプの孵化方法と与え方 〜皿式やペットボトル孵化器もご紹介〜

ブラインシュリンプとは?

熱帯魚の稚魚育成用の餌として欠かせないブラインシュリンプ。

今回は、ブラインシュリンプを扱うにあたって知っておくべき基礎知識と、ブラインシュリンプの卵の孵化方法から稚魚への与え方まで解説したいと思います。

私は、初めてブラインシュリンプを孵化させた時からその面倒くささから毎日稚魚に与える習慣ができず頭を悩ませました。その後、どうしたら手軽に気軽にブラインシュリンプの毎日孵化ができるかを考えて工夫して現在はストレスゼロでブラインを楽しんでいます。私が採用している簡単なやり方もご紹介しますので、参考になれば幸いです。

ブラインシュリンプは、淡水魚・海水魚を問わず小さな稚魚の餌としてとても有名ですが、これはアクアリウム界の中だけの話で、一般的な知名度は皆無に等しいまさに 謎?の生物ですよね。

ブラインシュリンプは、北米や中国の塩水湖に生息する動物プランクトンの一種です。シュリンプという名前から可愛いエビちゃんかと思いきや、全く違います。

別名をアルテミアともいい、販売される際もアルテミアかブラインシュリンプいずれかの名前で売られています。

ブラインシュリンプは淡水・海水問わず広く熱帯魚の稚魚の餌として定番となっており、これはワムシなど他のプランクトンや微生物と異なり、卵の状態で流通して入手しやすいこと、乾燥した卵なので保管環境により賞味期限が長いことが最大の理由です。

この卵は「ブラインシュリンプエッグス」という名前で市販され、熱帯魚店や通販で簡単に手に入ります。原産地は北アメリカや中国の塩水湖ですので、便利な世の中になったものです^_^

稚魚に与える時は、卵を孵化させて生まれたてのブラインシュリンプ幼生を与えます。この生まれたての幼生の状態が一番栄養価が高く、稚魚がグングン育ちます。

ちなみにミジンコやゾウリムシも最近はペットボトルに入った状態で市販されていますが、卵生メダカの生まれたての稚魚は非常に小さいので、ミジンコ・ゾウリムシはまだ口に入りません😅

ブラインシュリンプの孵化についての具体的な説明に入る前におすすめのブラインシュリンプの卵をご紹介しておきます。孵化率や小分けで使い勝手のよさから信頼のおける商品です。

観賞魚稚魚用のエサに使用の小エビの卵。 アメリカソルトレイク産の孵化率良い商品。

なお、成魚も含めた卵生メダカの餌については別の記事でも解説していますので合わせてご覧ください。

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ブラインシュリンプの孵化の基礎知識

では、ブラインシュリンプの孵化について見ていきましょう。

ブラインシュリンプの卵は塩水につけると約24時間で幼生が孵化してきます。元いた塩水湖の環境に戻してあげるイメージですね。

卵は薄茶色ですが、孵化した幼生はオレンジ色っぽい白い身体をしています。見た目はまるでクリオネのように可愛いく、サイズは3mm程度ととても小さくてプルプル身体を震わせて漂うように水中を泳ぎます。この動きが非常に魅力的で稚魚の食欲を刺激するので、初めて餌を口にする稚魚は本能的にパクパク食いつきます。

ちなみに、孵化後はブラインシュリンプ自体も成長します。でも餌をあげる必要はありません。水中のより小さな餌を食べてグングン成長します。孵化した翌日には更に倍くらいの大きさになり最大1cmくらいまでになりますが、孵化したてブラインシュリンプが一番栄養価が高く、稚魚の口の大きさにベストマッチします。

ですので、毎日稚魚が食べ切れる量を孵化させて与えることが基本になります。

孵化の際に押さえておくべきポイントは3つです。

🟠塩分濃度

卵をつける塩水は、元いた塩水湖の環境に合わせる必要があります。市販のブラインシュリンプエッグスにはそれぞれ最適な塩分濃度が記されていますので、確認して見合った濃度の塩水を作っていきます。

一般的には2〜3%の濃度なので、孵化させる容器の水量が1リットルであれば20グラムで2%などと塩の量を計って入れるのですが、一回の量が少なく毎日の事なのでいちいち専用のはかりを使って計るのは正直面倒くさいです。

私はペットボトルの蓋を使って目分量で計っています。500mlのペットボトルの蓋はすり切り一杯で約8gですので、例えば1リットルの水に対して塩20gで2%の塩分濃度なので、この蓋で2杯と半分の塩を入れます。あまりシビアにならずに目分量で大丈夫です。

🟠水温

水温も原産地の塩水湖に合わせて少し高めの25〜27度が好ましいです。水温が低いと孵化しないわけではありませんが孵化するまでの時間が違ってきます。27度では約24時間で孵化しますが、それより低い水温だともっと時間がかかり、私の経験では20度だと48時間くらいかかります。

孵化率に影響するのは温度が高すぎるまたは低すぎる場合で、高温は30度、低音は15度の範囲に環境を整えましょう。とはいっても現実的にはブラインシュリンプのためにわざわざ冷暖房を用意するわけにもいきません。

幸い、必要な水温の範囲は水槽の温度管理とほぼ同じですので、水槽の中または水面に孵化容器を設置することで解決可能です。具体的な孵化の実例については後ほどご紹介します。

🟠酸素量

ブラインシュリンプも生き物ですから成長するには酸素が必要になります。自然界では水中に充分な酸素がありますが、飼育環境では酸素が不足しがちで一向に孵化が進まない場合があります。

空気中にある酸素が孵化容器の水中に溶け込むよう、容器形状やエアレーションなど工夫することで解決できますので、これからご紹介する具体的な孵化方法の中で詳しく解説していきます。

ブラインシュリンプ2つの孵化方法

では具体的に孵化させる方法をご紹介します。

大きく分けて2種類の方法があります。

■エアレーション式

エアレーションして大量に孵化させる方法です。

稚魚の数が多い場合は当然餌の量が多く必要になりますが、限られた容器スペースの中で大量の卵を孵化させるには、酸欠にならないように酸素を充分にいきわたらせてあげる必要があります。

このため、エアレーションを使い水を攪拌させることで水中が常に酸素で満たされた状態を作ります。ボコボコとエアレーションさせるので、この方法で孵化させることを通称「ブラインシュリンプを沸かす」と言います^_^

 

■皿式

エアレーションせずに少量を孵化させる方法です。

逆に稚魚の数が少ない場合は少量の卵を孵化させるだけで充分です。先に説明した稚魚は毎日孵化したてのブラインシュリンプ幼生を与えるわけですが、1日で食べきれない量を沸かすと残ったブラインシュリンプは捨てなければならずもったいないです。

また、そのような場合は必ずといっていいほど、稚魚が食べきれないほどに餌を与え過ぎてしまうものです。これは、「残したらもったいない」という飼育者心理によるものですが、残ったブラインシュリンプが水質を悪化させて稚魚全滅などという最悪の結果になることもあります。あくまで餌は適量を、です。

ブラインシュリンプを少量だけ孵化させる場合にはエアレーションは必要無く、空気中の酸素が水中に取り込まれやすいように、水面が広く取れる皿のような平たい容器に入れた塩水につけておくだけで孵化してきます。これを通称「皿式」と言います。

もちろんエアレーションしても孵化しますが、わざわざしなくてよいので皿式は手間がかからず経済的です。

2つの孵化方法は、どちらがよいということではなく、自分のアクアリウム環境や稚魚の数・成長度合いに合わせ、1日に使うブラインシュリンプの量によって使い分けるとよいです。

では、それぞれの具体的なやり方をご説明していきます。

エアレーション式 ブラインシュリンプ孵化方法

まずは大量にブラインシュリンプを孵化させるための、エアレーション式です。

エアレーションで水を攪拌することが目的ですので、深めの容器を用意します。

この方法のために作られたブラインシュリンプ孵化器が市販されています。これは容器の底からエアレーションが出て容器内の水が常にグルグル回るように攪拌しとても効果的な構造に設計されています。水槽内に取り付けられるように吸盤がついていますので常に水槽内と同じ水温を保てるのもメリットです。

 

ブラインシュリンプの卵を孵化させることができます。殻セパレーター付き。水槽の内・外に設置可能。

専用のブラインシュリンプ孵化器の詳しい使い方は説明書を見ていただくとして、今回は私が採用しているペットボトルを使った手軽でローコストで一番簡単なエアレーション式孵化方法をご紹介します。

⭐️ペットボトル式孵化方法

まず500mlのペットボトルを用意します。ブラインシュリンプの量によっては1リットルでもよいですが扱いやすさで500mlを推奨します。

このペットボトルの真ん中を横から半分に切ります。カッターで簡単に切れます。くれぐれも手を切らないように。

切り離したペットボトルは、上部の蓋のある方をひっくり返して、下部のペットボトルに差し込みます。蓋はしたままで。これで容器の完成です。

逆さまにした上部が孵化させる容器で下部は倒れないように支える台座になります。

そこにストローを被せたエアチューブを、上から突っ込んでハイ出来上がり!多分これが一番簡単です^_^

ストローを被せる理由は、エアチューブに空気が流れ込んだ時にエアチューブが浮力で浮かび上がってきてしまうからです。エアチューブの先をストローに差し込んでおくことで動きが固定されます。エアチューブの先にエアストーンはつけてもつけなくてもよです。

この容器に水を入れます。500mlペットボトルのハーフサイズなので、溢れないように入れて200mlくらい入ります。2%の塩水にするには4gの塩なので、ペットボトルの蓋半分の塩を入れます。

あとは、ブラインシュリンプの卵を入れてエアレーションするだけです。

卵の量は、よく塩水1リットルに対し1gが適量と言われます。200mlだと0.2gなので計って入れてもよいですが、正直面倒くさいです(笑) 最初だけは計ってもよいですが、慣れてきたら目分量で大丈夫です。

エアレーションの強さは強めで水面がブクブクするくらいがよいです。

あとはエアレーションをして24時間を目安に放置します。

置き場所ですが、私はこのように目立たない場所に置いておきます。孵化器のように水槽に浮かべていないので水温が季節によって変化するので孵化にかかる時間が変わります。夏場は24時間ですが春秋は36時間くらいかなと思います。

冬場や、水温を年中一定にしたい方は、台座は使わずにペットボトル上部に穴を開けてフックで水槽枠に引っかけておくとよいです。

皿式 ブラインシュリンプ孵化方法

次は少量のブラインシュリンプを孵化させるのに便利な、皿式です。

こちらはエアレーションを使わず、空気中から自然に酸素を取り込ませることが重要なので、小さい容器ながらも水面を広く確保できる、できるだけ平たい容器を用意します。具体的には平たいタッパーが使い勝手がよいです。蓋は使いません。

タッパーに浅く水を入れます。だいたい1〜2センチの深さでよいです。私は10センチ×15センチの100均のタッパーを使っていますが、水の量はだいたい50〜100mlくらいでしょうか。

塩の量は1〜2g程度なので、最初はペットボトルの蓋で計ってもよいですが、慣れてきたら目分量で入れましょう。そしてこの段階でよくかき混ぜて塩を溶かします。

最後にブラインシュリンプの卵を入れますが、これはもう計れるレベルでないくらい少量なので目分量でパラパラっと。

ちなみに塩やブラインシュリンプの卵は毎日使いますし、慣れてきて目分量で入れる前提になると、このように調味料の容器に入れておくと、パラパラっと入れられて便利です。

左が塩、右がブラインシュリンプ卵です。

卵を入れた後はかき混ぜてないでそのまま24時間放置します。かき混ぜると容器の縁に卵が付着してしまい、付着した卵は孵化しないのでもったいないです。

また、置き場所は夏はどこに置いてもよいですが、春秋から冬にかけては水温が下がるので、水槽に入れておくのがよいです。タッパーの場合、水面に浮かべておけるので楽ちんでオススメです。

こんな感じ。

ちなみに、私の水槽は水温18度と低めの設定にしているので孵化しきるのに最大48時間くらいかかります。ですのでタッパーをセットしてから24時間で孵化した幼生を稚魚に度餌やりした後、そのまま孵化させ続けて48時間後の翌日にも後から孵化した幼生を成魚に与えています。

ですのでタッパーを2つ使って、毎日交互に新しく卵をセットする形で回しています。

ブラインシュリンプの稚魚への与え方

ここからは孵化したブラインシュリンプ幼生を餌として稚魚に与えるコツをご紹介します。

孵化したブラインシュリンプ幼生は、孵化容器の中でオレンジ色っぽくうごめいています。プルプルと細かく震えたように泳いでいるのですぐ分かります。だいたい底の方に集まっています。

同時に、孵化容器の中には卵の殻が残って水面に浮いています。この殻は稚魚に与えても食べませんので、生きている幼生だけを餌として与えます。

まず、殻と幼生を分離する必要がありますが、ブラインシュリンプ幼生が光の方向へ集まる習性がありますので、これを利用します。

エアレーションを止めて、容器の一箇所にピンポイントで光をあてます。これはなるべく狭い範囲で強い光をあてた方が効率よく幼生が集まります。

100均売っている小型のペンライトを使ってもよいですし、私はスマホのライトを使っています。毎日のことなので手軽にできることが大事です。

集まってきた幼生はスポイトで吸い込み稚魚に与えます。

この時、孵化容器の水が塩分濃度が高いのでそのまま稚魚水槽に入れずに、濾し器を使って幼生だけを取り出してから与える方法が一般的です。

手軽で使い勝手のよい濾し器がありますのでご紹介しておきます。目が細かく、スポイトで取り出した幼生と塩水をうまく分離してくれます。

 

ブライシュリンプの幼生やアカムシ・ミジンコの洗浄に。
細目、粗目の2種類メッシュ入り

と、紹介しておきながらなのですが、私は最近、孵化容器からスポイトで取り出した幼生と塩水をスポイトでそのまま稚魚水槽に入れています。

これには理由があります。

1. 卵生メダカ飼育ではやや塩分のある飼育水の方が病気になりにくいため病気予防の塩を兼ねてそのまま塩水を入れている

卵生メダカと塩については別の記事で解説しているのでこちらからご覧ください。

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2. 小型水槽で、毎日餌やり時に底水をスポイトで吸い出し、減った量の新しい水を足すサイクルでこまめな換水ができているため、少量の塩分は悪影響にならない

3. 濾すのが面倒くさいから^_^

まぁ、3番目の理由が最初の動機ではありますが、これでうまくまわっています。

気をつける事があるとすれば、なるべく細く容量の少ないスポイトを使って余計な塩水を吸い込まないようにするとよいと思います。私は1mlのスポイトを使っています。

ブラインシュリンプを与える量は、他の餌同様、稚魚が食べ切れる量です。これは稚魚の数、成長の度合いによって変化するので、ご自分の環境に合わせて孵化方法を使い分けたり、孵化させる卵の量を調整しましょう。

以上がブラインシュリンプを孵化させて稚魚に与えるまでの流れになりますが、餌以外の稚魚育成のポイントについては別の記事で解説していますのでぜひご覧ください。

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ブラインシュリンプの卵の保管について

最後に、ブラインシュリンプの卵は入手後、長期間に渡って毎日少量を使うものなので、卵を入手した後の管理についてご説明しておきます。

先に説明した通り、ブラインシュリンプの卵は乾燥した状態で長期間維持することが可能です。ただ保管環境により孵化率が大きく変わるので注意が必要です。高温多湿が苦手なため、湿度と温度が低い環境を用意しましょう。

日本の住居環境では冷蔵庫に入れて保管するのが孵化率の維持に最も効果的です。

ただ、他の食品と一緒に管理することになるので家族の了解を得ないといけません^_^

ちなみに私は水槽の近くにミニ冷蔵庫を置いてその中で保管しています。完全に卵生メダカ専用なので全く気をつかいませんし、水槽の近くにあるので毎日の餌やりが非常に楽ちんです。初期投資がかかりますが長い目で考えるとおすすめです。コスパのよいミニ冷蔵庫をご紹介しておきます。

ポータブルで便利なミニ冷蔵庫。0℃~60℃の温冷切り替えができるので保冷だけでなくお茶などの保温も可能。

ブラインシュリンプの餌やりシーンを見てみよう!

最後に実際にメダカにブラインシュリンプ幼生を与えて食べるシーンを見てみましょう。

稚魚がパクパク食べてますね。

成魚の餌やりシーンはこちらの記事で動画でご紹介していますのでぜひご覧ください。

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以上、ブラインシュリンプを毎日沸かすというのは慣れないと面倒くさいですが、やり方を工夫してなるべく手間を省くことで日々の習慣として定着させることが大事だと思います。我流での簡単な孵化方法をご紹介しましたが、少しでも皆さんの参考になれば幸いです。

また、どうしても毎日孵化させるのは難しいという方には、冷凍されたブラインシュリンプを使うという手もあります。もちろん、活きたブラインと比べると栄養価は劣りますが、とても使い勝手がよいので私は併用して使っています。こちらの記事で詳しくご紹介していますので合わせてご覧ください。

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