年魚の特徴
卵生メダカには年魚と非年魚が、います。
年魚は、ノソブランキウスに代表される、その名の通り一年しか生きられない魚たち。
非年魚は、アフィオセミオンに代表される、もう少し長生きできる種類です。
違いはこの点だけですが、飼育・繁殖を楽しむにあたっては大きな違いがあります。
この記事では、卵生メダカの年魚の特徴とその楽しみ方を解説します。
神秘的な年魚の生態
ノソブランキウスの仲間たちは、東アフリカの熱帯雨林の水深の浅い小川に生息しています。
彼らの住む環境は、一年の中で雨季と乾季が交互にやってきて、その環境はめまぐるしく変化します。
雨季に充分な水量に満たされていた小川は、乾季がやってくるとあっという間に干上がってしまいます。
つまり、彼らが水中で過ごせる期間は長くて一年。場所によっては一年に数回の雨季て乾季を繰り返す地域もあり、数ヶ月でその生命を終わらせる種類もあります。
彼らの住む小川のことを、水たまり、と呼んだりすることが、あります。それくらい彼らの住む場所は不安定な環境にあるのです。
ただ、そのような環境の中で、彼らは生命の神秘ともいえる力を身につけました。
自分が死んでも、その子孫を次世代に残そうという生物的進化の結果、卵のまま乾季を乗り切る力を身につけたのです。
親魚は雨季の恵まれた環境の水の中で、次世代に残す卵を水草や水底に産みつけます。
やがて乾季がきて、小川の干上がりとともに親魚はその生命を失いますが、産みつけられた卵は乾燥した乾季の環境の中でじっとその生命を育て続けます。
卵の中で数ヶ月間、新しい生命はゆっくりと成長し、細胞は親の残した遺伝子を眼や身体として再現していきます。やがて来る雨季を待ち続けながら…
雨季になると、干からびた小川はまた水をたたえて生命を呼び戻します。
卵は水を得てその殻を破り、稚魚となって水中に泳ぎ出します。
かつて親が自分を産んだ小川で…
と少々、詩的になってしまいましたが(笑)
まさに自然界の神秘といえる、熱帯魚でも珍しい生態をもつのが、卵生メダカの年魚になります。
ちなみにこの短命な年魚の生態は、老化研究の分野で世の中の役に立っています。詳しくはこちらの記事で解説しています。
生物遺伝学研究におけるノソブランキウスの役割このブログでは卵生メダカの種類や飼い方の情報をメインに解説していますが、今回は卵生メダカ 年魚のノソブランキウスの武勇伝についてです^_^卵生メダカの年魚は、その名の通り約1年のライフ[…]
年魚の楽しみ方
年魚の飼育の醍醐味は、この特徴的な生態を自分のアクアリウムで間近に味わうことです。
一年でそのライフサイクルを完結する運命ゆえ、稚魚から成魚になるまでの成長の早さ、特徴的な産卵行動、産卵から孵化のしくみ、さらには熱帯魚の中でもその色彩をして泳ぐ宝石とも言われることもある美麗なビジュアルが、その1年に凝縮された魚と言っても過言ではないと思います。
私たちはこの自然界の奇跡をアクアリウムで再現し、目の当たりすることができます。自分の手で、目で体感することで大きな喜びと満足感を得ることができます。他の熱帯魚では味わえない生命の不思議さを実感できることはこの上ない喜びをもたらしてくれます。
私はこの魅力にすっかりはまってしまいました^_^
さらには、アクアリウムの管理という点でも、この生態を活かすことができます。
例えば、仕事や長期旅行などで毎日の熱帯魚飼育ができなくなった時、または夏の猛暑のなか熱帯魚が高温飼育で弱ってしまう時、卵生メダカの年魚はこの時期を卵の休眠という形で乗り切り、環境が整い次第、また再開することも可能です。
また、ノソブランキウスなどの年魚は、非年魚同様、多くの体色のバリエーションをもった品種がいます。これをコレクションしたり、はたまた水草水槽に群泳させたり、鑑賞魚としてももちろん素晴らしい魚たちです。
彼らの生態を知って、少しでもそれに近い環境を作ってあげれば、卵生メダカを我が家の水槽で飼うことはさほど難しくありません。
卵生メダカの飼育の始め方、繁殖の方法については、こちらのカテゴリーで、詳しくご紹介しています。
ぜひ、彼らの神秘的な生態を体験してみてください。みなさんにぜひ飼育の喜びを味わってみて欲しいと思います。