生物遺伝学研究におけるノソブランキウスの役割
このブログでは卵生メダカの種類や飼い方の情報をメインに解説していますが、今回は卵生メダカ 年魚のノソブランキウスの武勇伝についてです^_^
卵生メダカの年魚は、その名の通り約1年のライフサイクルの中で卵から孵化して成魚となり繁殖を終えてその一生を終えます。
※詳しくはこちらの記事でご紹介しています。
年魚の特徴卵生メダカには年魚と非年魚が、います。年魚は、ノソブランキウスに代表される、その名の通り一年しか生きられない魚たち。非年魚は、アフィオセミオンに代表される、もう少し長生きできる種類です。違いはこの点だけ[…]
この生態は、地球上の生物の中でも非常に珍しく、特に短命なライフサイクルについては、その遺伝子構造に基づいた細胞の変化が研究対象モデルとして最適であると認められて、私たちの役に立つ生物遺伝学の研究材料に使われています。
最も寿命の短い脊椎動物
厳密に言うと、ノソブランキウスの中で研究対象に選ばれた種類は、
ノソブランキウス ファーザアイという種類です。(Nothobranchius furzeri)
※日本語読みでは、フルゼリ、とも呼ばれます。
ノソブランキウスの中では飼育難易度最高という何種です。難易度の高さは特に寿命が短く累代繁殖が難しいことが関係しています。
地元のケニアやタンザニアの自然環境では寿命は平均で約3カ月程度です。
アフリカの雨季と乾季は年に一度とは限りません。場所によっては数ヶ月毎に完全に干上がってしまい水のある時季の方が短い場所さえあります。まさに水たまりに生息しているようなものですね。そのため、1カ月程度の場合もあるそうです。
※水槽飼育の場合は3〜5カ月以上生きることもあります。
研究材料として選ばれた理由はこの寿命の短さにあります。なんと、最も寿命の短い脊椎動物なんです!
短命な生物の研究例としては、同じ3カ月程度の寿命でショウジョウバエなどが挙げられますが、哺乳類であるヒトの遺伝子学的研究に役立つ実験対象としては脊椎動物であることが重要で、最も寿命の短い脊椎動物のファーザアイが選ばれたのです。スゴイ!!
暮らしに役立つ老化研究
ノソブランキウス ファーザアイの遺伝子構造の分析からは、さらに哺乳類であるヒトと類似性のある特性が見えてきて、成長スピードや病気とその進行、さらには老化に関して非常に有意義な研究対象であることが確認されました。
特に老化研究については、遺伝子情報であるゲノムの配列がヒトの老化の新しいモデルとして採用され貴重な存在として研究に活用されています。
ファーザアイは孵化後2週間で完全に性的に成熟し、繁殖後は急激に老化の一途をたどります。
その短い一生の中で、各細胞がどのように成長しさらには老化するか、老化にはどの遺伝子が関与しているかを研究者たちが調査研究し、その結果が論文化され、実際の医療や企業において薬や食品・化粧品などの商品開発に活用・反映されて私たちの暮らしに役立っているのです。スゴイと思いませんか!
私の大好きな卵生メダカ ノソブランキウスがこんなに世の中の役に立っているなんて!
熱帯魚界としては知名度が低いノソブランキウスですが、せめて研究材料としてでもよいからもっと有名になってもらいたいものです。そんな思いから、皆さんにご紹介しました。
偉いぞ!ノソブランキウス!!